70年代欧州商用モデルたちの饗宴

<欧州ハイルーフサミット>

EUROPEAN HIGHROOF #03

激レア! 日本では知られざるフィアットのバン 1970 FIAT 238

欧州ハイルーフサミットを締めくくるのは、『フィアット238』だ。イタフラ車に詳しい諸兄でも頭に「??」がいっぱい浮かんじゃうような商用車で、1967年に登場した。

前任の『フィアット1100』はFRサルーンを下敷きにしたFRだったが、238ではいわゆるジアコーサ式の横置きFFを採用している。フィアットのFFは『128』が初出と思われがちだが、なんと238はそれよりも早い。さらに遡るとフィアット傘下のアウトビアンキが1964年の『プリムラ』でジアコーサ式FFを用いていた。革新的だが未完成なFFについて、慎重な巨人フィアットは、いきなり市場に出す前に子会社で発売して様子を見たのだ。余談ながらアウトビアンキはフィアットの先行開発的な車種が多く、有名な『A112』も『フィアット127』のアドバルーンだった。

そのプリムラをベースにしていた238は、プロペラシャフトがないFFのメリットを生かし、ラゲッジスペースの床を極限まで低くすることができた。全長約4.6m、全幅約1.8mのボディは、現在の日本の主力バンであるハイエースやキャラバンに近い大きさだが、低いフロアとハイルーフにより、サイズ以上の広さが感じられる。238にはバン、貨客両用のコンビ、ミニバスなどのバリエーションが展開されたが、キャンピングカーのベース車としても人気を博したのも、この広い室内が理由だった。

238のエンジンはフロントシートを持ち上げると現れる。この年式ではフィアットのベストセラー『124』と同じ1197cc OHVを搭載するが、初期は同じ1.2リッターでも一世代前の1221cc版だった。たった1.2リッター44psしかないので「走らせるの大変そう」と思いきや、車重が軽く低速トルクがあるため、走り出しはとても軽やかだ。4M/Tを駆使すれば、現代日本の高速道路移動も可能だろう。

238はその後1978年にフロントに樹脂グリルを設けるなどマイナーチェンジを行い『238E』に進化。その際エンジンを『フィアット131』用の1.3リッターOHVに変更している。2381983年に生産を終了し、後を『242』、『デュカト』に譲ったが、現行型デュカトもキャンパーのベースとして多用されるのは、フィアット大型1BOXバンの伝統と言えるだろう。

取材した238は以前レース関係で使用されていたとのことで、海外の238クラブ(そういうクラブがあることに、海外自動車趣味の奥深さを実感)のメンバーが持っていたもの。ヤレは見られるものの、全体的な程度は良好で、路上復帰は容易な印象だ。「古い欧州の商用車なんて維持できるかな」と思われがちだが、一般的に流通した量販車種のエンジンやパーツを多用していることもあって、現在でも部品供給は可能だという。

238を見て、エスタフェ、T2のように、移動販売車、看板車として使うというのもアリだと感じた。というか238、いいなあ。商用車好きには刺さりまくり。持っていたら何に使おうか、移動式の絵描き部屋……かな!?

238はジアコーサ式を世界初採用したアウトビアンキ・プリムラをベースに開発されたFF商用車。1967年~83年まで製造。1978年には樹脂製グリルが付き238Eに発展した。欧州では、キャンパーのベースとしても多用された。デュカトは後継モデル。
リアドアは観音開き。ハイルーフ部も跳ね上げることが可能なので、高さがある荷物を積むのに便利。
助手席側のサイドドアは観音開きでガバっと開く。開口部の大きさに目を見張る。FF商用車ゆえの床の低さ、ラゲッジ部だけハイルーフになっているのがわかるだろう。
黒いビニールレザーでビジネスライクだが、シートの座り心地は良い。
FRサルーン・フィアット124の1.2リッターOHVエンジンを実用寄りにチューンして搭載。車体も軽いため思いのほか快活に走る。
同時代のフィアット系パーツを多用したダッシュボード。センターのキルスイッチは後付け。
メッキのセンターキャップにもFIATロゴが入る。
細い補助ステーを持つユニークな形状のドアミラー。
フロントのひさし裏には、ベンチレーターが備わる。車内側天井にも吹き出し口がある。
ラゲッジスペースのみハイルーフ化。ハイルーフ部はFRP製で、ノーマルのバン比で+290mm高い。
FFなのでプロペラシャフトが無いため、床面が低いラゲッジスペースを実現。筆者(身長166cm)なら、立っても頭上にはさらに余裕がある。更にリアタイヤハウス以外は完全にフラット。ラゲッジスペースは全長4.6mとは思えないほどに広大。
床下にスペアタイヤを吊り下げられないため、左リアタイヤハウスの上に窪みを穿ち、そこにスペアタイヤを載せるようになっている。右の棒はゴツめのジャッキ。

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H&T

イタリアに現地スタッフを擁し、欧州からの趣味性が高いクルマ輸入を得意としている。イタリアでのモディファイ・レストア・カスタマイズも可能だ。
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