Alfa Romeo 4C Spider奇跡のミッドシップ

2020.06.05 イタリア(ITALIA) ミッドシップ(MR) アルファロメオ(ALFAROMEO) スポーツカー オープンカー ライトウェイト 00年代 4C
アルファロメオ・スペチアーレの1台である4C/4Cスパイダー。惜しむらくは生産終了となった、奇跡のミッドシップ・ライトウェイト・アルファロメオに着目する。
TEXT:吉田拓生 PHOTO:山本佳吾
SPECIAL THANKS:FCAジャパン(https://www.alfaromeo-jp.com/
2013年にデビューした4C。排ガス規制のため販売が終了している国も少なくないが、我が国ではまだ販売中。4気筒モデルながらカーボン製のシャシーを備える稀有な1台だ。

フェラーリF40やポルシェ930ターボ、2代目ロータス・ヨーロッパやアバルト124スパイダー、マクラーレン720S、ビトルボ・マセラティ、KTM X-BOW等々、僕はドッカンターボ+後輪駆動のクルマに真の興奮を覚える。なかなか思うようにその挙動を掌握できない、そんな不敵なドライバビリティに征服欲が湧くのだと思う。そしてアルファロメオ4Cこそ、その延長線上に位置している。

近代のアルファロメオは2種類に大別できる。一般的なプロダクションモデルか、突発的なモデルか。そのどちらも個性的で印象深いのだけれど、ファナティックの記憶に深く刻み込まれるのは後者の方であろう。

アルファロメオ初のミッドシップロードモデル(ティーポ33/2ストラダーレを除けば!)であり、カーボンファイバー製のモノコックタブを持つ4Cは疑う余地なく突発的なモデルの側だ。とはいえ長いメイクスの時間軸の中で考えれば、4Cこそがアルファロメオのあるべき姿のような気がする。そう、エンジンの気筒数にあやかった4Cや6C、8Cといった車名が当然のように使われていた時代の末裔こそが現代の4Cである……というストーリーこそが、アルファロメオという伝説的なメイクスの現在に相応しいと思う。

4Cのデビューは2013年と新しくはないが、2020年の今日ドライブしても少しも古さを感じさせないのは、カーボンファイバーシャシーの図抜けた剛性感と、この究極のシャシー構成素材が秘めている神通力のおかげだろう。そしてもうひとつ、デュアルクラッチトランスミッションの貢献も忘れてはならない。これがありふれた3ペダルやトルコンA/Tならば、ちょっとしたノスタルジーが臭ってしまったに違いないのである。

エンブレムにも細かなボディラインにもオーナーの所有欲を満たす魅力が宿っている4Cスパイダー。スーパースポーツカーの資質を持ちながら、しかし使い切ることができるドライバビリティの持ち主というポジショニングは他に例がない。車体の構成はロータスのモデルに似ているように思えるが、性格は完全なイタリアンだ。

今回試乗したモデルは4Cスパイダー・イタリアという限定車だった。ステッチの色や細かな意匠の違いが限定の理由だが、既に完売しているという。スパイダーとはいえもともとバスタブシャシーを採用しているのだからドライビングの手応えに違いはない。そう、4Cのドライビングは手応えずっしりで、とにかく疲れる。ブレーキは少しサーボが効いているが、ステアリングはノンパワーでみっちりと重い。しかも乗り心地は当然のようにハード。”これに乗ってみろ!”という作り手からの挑戦状のようなクルマだが、スピードを出せば出すほどハードがナチュラル方向にシフトし、ドライバーを夢中にさせる。

4Cの中古車情報を見てみると600万円台の個体がいくつかあったので、覚悟さえあれば手に入れることは不可能ではない。いくらクセッ気のあるターボユニット、しかもミッドシップといっても、最高出力は240psなのでドライビングの面でもやってやれないことはない。どちらも少し無理目ではあるが、目標としてはちょうどいい塩梅であろう。

冒頭に挙げたように、ドッカンターボで後輪駆動というクルマはドライバビリティがリスキーなので、メーカーはそう簡単には作りたがらない。しかもアルファロメオ・ブランド、しかもカーボンシャシーのミッドシップなので、もし後継モデルがなければ(恐らくないだろう)、4Cは突発的なモデルというより、アルファ史に残る金字塔となるはずだ。