300台以上所有してきた達人が選んだ2台会長の新しい遊び道具は
希少&スパルタン!

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これまでに300台以上のクルマを乗り継いできた是枝正美さんは、日本最古の自動車クラブであるオートモビル・クラブ・ジャパン(ACJ)を復活させた方。様々なイベントを主催されている是枝会長が、最近特にお気に入りという、2台のスモールカーをご紹介しよう。
TEXT:中島秀之 PHOTO:奥村純一

SPECIAL THANKSAutomobile Club Japan(https://acj1908.com/

1969 NSU TTS

ティーポ誌2013年11月号のアルファロメオ特集の中で、「279台を乗り継いだ達人」としてご紹介した、是枝正美さんをご記憶だろうか? 日本最古の自動車クラブ、ACJを2011年に復活させ、その会長に就任された是枝さんは、地元国立の谷保天満宮旧車祭や、熱海ヒストリカGPの仕掛人として有名な方なのである。

あれから7年。久々に是枝さんのお店「倶楽部六六食房」にお邪魔した。昨年古希を迎えられたが、相変わらずお元気で、精力的に様々なイベントを開催されている。「年に4、5台はクルマを買うので、通算所有台数はもう300台を超えているはず」とのことだ。

そんな是枝会長が最近気に入っている「遊び道具」2台をご紹介しよう。まず最初は、3年前に入手されたという1967年式NSU TTSだ。是枝さんは、ミニと911ナローで輸入車趣味を始められたそうで、以前から「70歳を過ぎたら、原点のミニとRRのクルマに戻りたい」と思われていたそうだ。このため現在の愛車ラインナップ(例によって十数台あるのだが)の中心はミニとRR車で、ミニはこの後紹介するイノチェンティ・ミニ以外に、850や998クーパーなどがあるそう。またRR車は、ドーフィン・ゴルディーニやドーフィン1093スタイル(1.6リッター)もお持ちとのこと。

さてNSUだが、同社は1900年にオートバイの製造を開始し、戦前は2輪と4輪を生産。戦後2輪メーカーとして復活し、1958年にプリンツで4輪車にも復帰。1964年には世界初のロータリー・エンジン車、ヴァンケル・スパイダーを発売した。だが1969年にアウトウニオンと合併し、1977年にその名は消滅した。

このNSUが、プリンツの一回り大きなモデルとして1963年に発売したのがプリンツ1000で、空冷直4 OHC 996ccを搭載するRR車だった。このプリンツ1000の高性能仕様として1965年に登場したのが、1085cc/55psのTT。更に翌1966年に追加されたのが、レース用のホモロゲモデルとして排気量を996ccに下げ、83psまでチューンしたエンジンを搭載するTTSだった。

ホモロゲモデルを
更に走れる仕様に

是枝さんが入手したTTSは、1967年11月に晴海で開催された、第9回東京オートショーに展示されたクルマそのもの(当時是枝さんは実際に見たそう)で、この時は赤いボディのノーマル車だった。その後ロールバーが装着されるなど、ややハードなモディファイが何人目かのオーナーの手で施され、その状態で是枝さんの元にやってきた。是枝さんは、オイル漏れやシフトリンケージ調整など、いくつか不具合を修理した上で、バンパーを外してフォグランプを装着したり、太目のホイール&タイヤに変更し、前後フェンダーを僅かに叩き出したりと、様々なモディファイを加えている。

「かなりハイギアードで、各ギアで引っ張って運転する必要があるんですが、動きがシャープで面白いクルマですよ。音もいいですし」と是枝さん。ただ「足が硬すぎる」そうで、「なるべく早く直したい」ともおっしゃっていた。

競技用の安全燃料タンクを搭載。トランクスペースはかなり大きめだ。
8本スポークホイールに165/60R13のネオバを装着。フェンダーは前後共、僅かに叩き出されている。
当時のツーリングカー・レース出場車を模して、キャレロのフォグランプを外側に向けて装着した。オイルクーラーはTTS純正。
メーカーは不明だが、迫力ある4本出しエキゾーストを備える。
リアのエンブレムはTTの後に本来Sの字があるが、なくなっていたため、NSUとドイツ国旗を追加した。
フロントのモールにTTSの文字が入る。
色々後付けされているが基本的にはシンプルなインパネ。ステアリングはモトリタに交換。RRのため足元中央に出っ張りがない。
後席部分のみで構成されるロールバーは、斜め補強の入った頑丈なもの。
リアに横置きされる空冷直4OHC1リッター・エンジン。83psを発揮。
インパネ中央の追加メーターは新しいもので、左から油圧、電圧、油温の順。
シートはバケットに両方とも交換されている。運転席はCOBRAを新たに装着。
ペダルはアクセルがオルガンタイプで、ブレーキとクラッチはフロアから飛び出しているような形状。

SPECIFICATION
NSU TTS
全長×全幅×全高:3830×1505×1360mm
ホイールベース:2250mm
車両重量:685kg
エンジン形式:空冷直列4気筒SOHC
総排気量:996cc

最高出力:83ps/6150r.p.m.
最大トルク:8.7kg-m/5500r.p.m.
サスペンション(F/R):ダブルウィッシュボーン/セミトレーリングアーム
ブレーキ(F/R):ディスク/ドラム
タイヤ(F&R):135R13

ベースは真面目なセダン

ベースとなったプリンツ1000(1967年からNSU 1000)は、小型2ドアセダンとしてよくできたクルマで、サイズの割に車内は広く、トランクも大きかった。

1982 INNOCENTI MINI
DE TOMASO

もう1台、是枝会長の最近のお気に入りが、これまた3年程前に入手されたという、1982年式イノチェンティ・ミニ・デ・トマソだ。

イノチェンティ社はスクーターで成功した後、1960年にイギリスのBMCと提携して4輪車生産に進出。ミニやADO16などをベースとした独自の車両を開発・販売していた。だが1975年に親会社のBLが撤退、翌年デ・トマソ傘下に入った。1981年にはダイハツからエンジン供給を受けるが、1990年にフィアットが買収。1992年に生産を終了した。

このイノチェンティが、ミニのシャシー&パワートレインの上に、ベルトーネ・デザインのモダンなボディを与え、1974年に市販したのがイノチェンティ・ミニ90/120。そして、その高性能版として1976年に登場したのがミニ・デ・トマソだった。

BMC Aタイプ、直4 OHV 1275ccエンジンは、シングルSUキャブレターながら、オリジナル1275クーパーSの76psに迫る74psを発揮。足周りはラバーコーンのまま強化され、外観はオーバーフェンダー、フォグランプ内蔵フロントエアダムスポイラー、ボンネットエアスクープなどで武装。アンサ・マフラー、専用インパネやシートなども採用されていた。

当時日本にも少数ながら輸入されたこのイノチェンティ・ミニ・デ・トマソだが、後継のダイハツ製3気筒ターボ・エンジン搭載車を含めて、現存台数は極めて少ないと思われる。

走行9000km
奇跡の個体をモディファイ

そんな訳で、ただでさえ珍しいクルマなのに、この個体はなんと走行9000km(!)の極上車で、新車から3人目の前オーナーが長く保管していたものを、ネットオークションを通じて是枝さんが購入されたとのことだ。

既に前オーナーにより、東京のミニマルヤマが1983年に発売したエアロパーツ「レコルト・モンツァ」や、スピードスター製ホイールなどは装備されていたが、「イジらないと気が済まない」是枝さんだけに、入手後様々な部分に手が加えられている。

外観では、丸型フォグランプ、ダミーのボンネット・キャッチピンなどを装着。ホイールのセンターキャップを特注で製作して装着し、「レコルト・モンツァ」のリアスポイラーは取り外して、そこにストライプを入れている。

足周りは、どこかのタイミングでラバーコーンからコイル・スプリングに換えられていたが、そのコイルとダンパーを交換し、リセッティングを施した。また抜群に美しい状態だったインテリアは、ステアリングを小径のモトリタに変更する程度にとどめている。

是枝さんはこのクルマで、各種イベントに参加されているそうで、実は取材前日にも、袖ケ浦フォレストレースウェイで行われた、ファミリー・サーキット・デイに行かれていたそうだ。結構な雨の中、サーキット走行を楽しまれたそうだが、帰路に水回りの樹脂製ジョイント部品が壊れて、現在は修理パーツの到着待ち状態とのことだ。

珍しくてスパルタンなクルマがお好きな是枝さんにとって、今回ご紹介した2台は、最高の相棒のようだった。

BMC Aタイプ直4OHV1275ccエンジンは74psを発揮。
レコルト・モンツァのスポイラーは取り外し、3色ストライプや欧州ナンバープレートを装着。
スピードスターホイールにアドバン032Rの165/70R10を装着。センターキャップは是枝さんが特注したもの。
ミラーはヴィタローニ・カリフォルニアン。70年代製イタリア車に最もよく似合う。
リアゲート右下にある。70年代らしい字体のイノチェンティとデ・トマソのエンブレム。
ノーマルはねじ込み式のキャップだが、アルミ製フィラーキャップに交換されていた。
メーターは6連式。メインとなる速度計と回転計は、中に警告灯が組み込まれた不思議なデザイン。
ペダルはミニ用の、ジョン・クーパー・ブランドのものを装着。
ベースとなったミニに比べて、ラゲッジルームはかなり容量を増している。
ドア内張には、アゼストの大型スピーカーが前オーナーの好みで装着されていた。
シートが非常に美しい状態なのがわかる。特に後席はまるで使用感がないほど。
センターコンソールを挟んで、左右対称デザインのインパネ。ステアリングはモトリタの革巻きに交換。
走行9000kmゆえ、フロントシートの程度も抜群。シートの座り心地もかなり良かった。

SPECIFICATION
INNOCENTI MINI DE TOMASO
全長×全幅×全高:3120×1500×1380mm
ホイールベース:2040mm
車両重量:730kg
エンジン形式:水冷直列4気筒OHV
総排気量:1275cc

最高出力:74ps/6100r.p.m.
最大トルク:10.2kg-m/4500r.p.m.
サスペンション(F/R):ダブルウィッシュボーン/トレーリングアーム
ブレーキ(F/R):ディスク/ドラム
タイヤ(F&R):155/70R12

ダイハツ・エンジンに進化

1982年にダイハツ製直3 OHC 993ccエンジンを搭載、足周りを前ストラット、後横置きリーフとしたトレが登場(左)。翌年これにターボを追加し、各部をモディファイしたターボ・デ・トマソ(右)も登場している。

OWNER

是枝正美さん

東京国立にある「倶楽部六六食房」のマスターにして、オートモビル・クラブ・ジャパン(ACJ)会長。様々な旧車イベントの仕掛人でもある。

ルート20に近いルート66
東京国立にある是枝さんのカフェ「倶楽部六六食房(CLUB66DINING)」は、お店の内外にルート66を始めとした看板やグッズがたくさん飾られている。薬膳カレーが人気のメニュー。