パワーを使い切って走りたいならコレでしょ!MT×スモール=カイカン無限大!

2020.06.08 ルノー(RENAULT) スモールカー マニュアル(MT) フィアット(FIAT) インプレッション 500 トゥインゴ
ルノー・ジャポンが2月に導入したトゥインゴSは今となっては珍しいM/T仕様のエントリーグレードで、シンプルに走りを楽しみたい向きには打ってつけだ。そこでライバルのフィアット500Sとともに街へ走り出してみた。
TEXT:嶋田智之 PHOTO:山本佳吾

SPECIAL THANKSルノー・ジャポン(トゥインゴ/https://www.renault.jp/ガレージエスト(500/http://www.garage-est.co.jp/

ちっちゃいクルマってやっぱ楽しいんだよな……っていう想いが年々ちょっとずつ強くなってきてるのは、断じて加齢のせいじゃない(と思いたい)。嘆いても仕方がないことだし、その理由には納得せざるを得ないところもあるけれど、クルマのサイズはどんどん大きくなってきた。仕事柄でかいクルマを走らせることも多々あるし、でかいクルマの良さもたっぷりと解ってる。でもちっちゃいクルマに乗ってると、ふと“やっぱコレだよなぁ”という感覚がどっかから湧き出してくるのだ。想いがちょっとずつ強くなってきてるのは、そんなふうな感覚を与えてくれるクルマが次第に少なくなってきてるから、なのかも知れない。

ちっちゃいクルマの楽しさは、まずは路上での自由度が高いことにある。でかいクルマならブレーキペダルに足が触れてるようなときにも、アクセルペダルの上に足を載せていられたりする──いろんな意味で。走れる道だって多いし、なぞるラインだって好きに選びやすい─いろんな意味で。ためらわされることが少ないのだ。余計なストレスを感じることなく、爽快な気分で走っていられるってわけだ。

エンジンのアウトプットが──大抵の場合は──限られてるっていうのもいい。強烈な加速に異次元のスピードっていう方もだいぶ魅力的ではあるのだけど、そっちはいつでもどこでも気ままに堪能できるってわけでもない。あるモノをキッチリと使い切る気持ちよさ。しっかり踏んでいける楽しさ。それって実は相当な快感なのだ。

で、それを堪能するには、ギアボックスは手動式の方が具合がいい、というのが僕の持論だ。2ペダル否定派でもないしM/T原理主義者でもないのだけど、ちっちゃいクルマの持つ身軽で自在な感覚をいい具合に増幅してくれるのが、手動式変速機ならではの“操縦”感だと思うから。

一番重要なのはギアを自分で選択して切り替えること=生きるスピードを自分で選んでるような感覚が得られることだから、パドル付きでもいいっちゃいいのだけど、わざわざクラッチペダルを踏んだりシフトスティックを動かしたりする面倒を請け負うだけの価値はある。

RENAULT TWINGO S

日本では2016年秋に発売された3代目トゥインゴはRRレイアウトを採用して最小回転半径なんと4.3mを実現している。
リアのランプも立体的な造形に変更。
2019年夏のフェイスリフトでフロントグリルはコンパクトに。CシェイプのLEDランプが採用された。
前期型ではGTのみ装着していたサイドの吸気用エアインテークは全グレードに標準となった。
タイヤはミシュラン・プライマシー4で前165/65R15、後185/60R15の前後異サイズ。

ここに紹介する2台は、中でもそういうテイストが濃いめのモデル。トゥインゴSは全長が3645mmで全幅が1650mm、フィアット500Sは全長が3610mmで全幅が1625mm。最近のコンパクトカーは全幅が5ナンバー枠ギリギリの1695mmだったり1700mmを越えちゃって3ナンバーになってたりすることも少なくないのだけど、どっちも楽勝で収まってる。日本の道路は5ナンバー枠が当たり前の時代に作られてるようなものだから、目抜き通りを走ってても路地に紛れ込んでも、持て余すような感覚になることはまずない。抜群のサイズ感なのだ。

そして持て余さないという意味で、トゥインゴが驚異的な持ち味を発揮してくれるということは、多くの人が先刻御承知だろう。1800年代半ばのジョルジュ・オスマンによるいわゆるパリ改造で道路網も近代的に整備されたとはいえ、中世からの狭く入り組んだ路地が今もたんまりと残るパリの街をやすやすと駆け抜けるために作られたクルマ。リアエンジンにしたことで据え切りすると壊れてるのかと思うくらいの切れ角を稼げたフロントタイヤが、驚くほどの小回りを見せてくれる。唖然とするほどの機動力なのだ。

実用ハッチなのに
侮れない面白さがある

それを自然吸気の1リッター3気筒エンジンと5速M/Tで走らせる小気味よさといったら、もうそれだけで格別。いや、パワーは73psでトルクは9.7kg-mと、非力なのだ。だけど低回転域でも扱いやすいのに回していくと面白味を増していくような性格だから、ついつい右足を深くプッシュしがちになって、そうなると950kgの車体は思いのほか活発に走ってくれたりする。

エンジンの回転落ちが穏やかな設定なので、素早くビシビシとギアを繋いでいくようなスパルタンな走り方は不似合いだけど、クラッチを繋ぐまでの一呼吸がスマートな走り方を選ばせてくれるようで、何だかそこがとってもフランスっぽい。それでもエンジンはリアといいつつミッドシップに近いレイアウトで低く積まれてるから、ハンドリングは素晴らしく自然で素直でバランスがいい。

本国ではベーシックな実用ハッチ的位置づけなはずなのに、侮れない面白さなのである。そういう多様性が、やっぱりとてもフランスっぽい。

丸みをおびてポップなデザインのコクピット。センターにはスマートフォンと連携できる7インチのタッチスクリーンやUSBポートが備わっている。
これぞベーシックといった趣きの太めのシフトノブは非常に素直な操作性。
いかにもフランス車らしい軽い踏力の3ペダル。
ラゲッジルーム下のエンジンはリアアクスルよりやや前方に配置されており、素直で軽快な運動性能。
ボディはスモールでも、シートは広めの座面がゆったり受け止めてくれるのがフランス車。長距離のドライブでもびっくりするほど疲れにくい。
後部座席は必要十分なスペースながら、明るくポップなデザインで圧迫感を軽減。後ろにドアがあるのがスモールカーとしては大きなメリットだ。
ラゲッジルームは通常174リッター、後席を倒せば最大980リッターまで拡大。

SPECIFICATION
RENAULT TWINGO S
全長×全幅×全高:3645×1650×1545mm
ホイールベース:2490mm
トレッド(F/R):1455/1445mm
車両重量:950kg
エンジン形式:直列3気筒DOHC

総排気量:997cc
最高出力:73ps/6250r.p.m.
最大トルク:9.7kg-m/4000r.p.m.
サスペンション(F/R):ストラット/ド・ディオン
ブレーキ(F/R):ディスク/ドラム
タイヤ(F/R):165/65R15/185/60R15
本体価格:179万円

TOPICS M/Tのルノーといえばコッチも……

ルノーの現行ラインナップでトゥインゴと真逆に位置する最強ホットハッチ、メガーヌR.S.トロフィーRは世界で500台限定生産で、日本にはそのうち合計51台が導入された(販売終了)。

1 2