異なるキャラを持つ英独伊仏クラシック!!長年に渡って愛され続けたのは
シンプルでベーシックだから!

2020.06.19 ルノー(RENAULT) フランス(FRANCE) スモールカー ミニ(ローバー) イタリア(ITALIA) フィアット(FIAT) ドイツ(GERMANY) クラシックカー 希少車 フォルクスワーゲン(VOLKSWAGEN) ベーシックカー ビートル 4(キャトル) 126(フィアット)
クルマの魅力はスタイルや性能など、それこそ千差万別。でも、ここで紹介するクルマは、そのどれもがシンプルでベーシックと潔い。だからこそ長年に渡って多くの人々に愛され乗り続けられている。そんなシンプルでベーシックなヒストリックカーそれぞれの魅力を探ってみよう。
TEXT:森口将之 PHOTO:内藤敬仁, 佐藤亮太
SPECIAL THANKS :C-WORKS(MINI)/Club RENAULT 4 JAPON(R4:club-renault4.jp)/FLAT4(VW:https://www.flat4.co.jp)/TRUCCO(126:http://www.a-trucco.com

以前『ルノー16(セーズ)』に試乗しているときのこと。1960年代の最上級ルノーならではの奥の深いデザインや乗り心地を堪能しながら、心の片隅で「でも自分が乗るならキャトルのほうがいいかなぁ」などと考えを巡らせていた。
安上がりな人間だなぁと改めて思ってしまったけれど、セーズのメカは『4(キャトル)』と似ている。それならベーシックカーのほうがトラブルを起こす箇所が少ないかもしれないし、信頼性が高そうな新しめの年式を選べるキャトルのほうが安心できるという理由が頭をよぎったのだ。

もちろん中古車のコンディションは千差万別で、構造や年式や距離だけでは判別できないことは自身の経験からも知っているけれど、たとえヒストリックカーといえども乗って楽しみたいわけで、味わいのある設計を受け継ぎながら生まれは新しく、シンプルな成り立ちのベーシックカーというのは、ビギナーからベテランまでやっぱり外せない存在だと思うのだ。

欧州生まれのロングセラーベーシック4台という括りは、自分が担当しただけでも何度かティーポのページを飾っている。しかし今回は前に書いたようなこだわりを込めた結果、『フィアット126』、『ローバー・ミニ』、『ルノー4』、『フォルクスワーゲン・ビートル』というメンバーに集まってもらった。キャラクターの違いを楽しみながら、今の日本の道で使えるかどうか、についてもチェックしてみた。

狙い目のクラシック・ベーシック FIAT 126

この種の企画でフィアットがチンクエチェントこと2代目『500』ではなく126なのは珍しい。500のほうがポピュラーだから、と多くの人が思っていることもあるだろう。

でもそれは日本に限った話かもしれない。2代目500は1957年から75年まで18年にわたり作り続けられたけれど、後継車として1972年に発表された126は2000年まで現役を務めていたから、モデルライフはこちらのほうが長いのだ。

生産台数も、500の367万8000台という数字は素晴らしいけれど、126はそれを上回る467万1000台をマークしている。ただこのうち2/3以上になる331万8000台はイタリアではなく、ポーランドのFSOで作られた。

以前ティーポで『フィアット124』の試乗記を書いた際に、生産台数の半分以上は旧ソ連が担当していたことを紹介した。当時のフィアットが旧共産圏諸国に積極的に進出していたためで、126もイタリアでのベーシックカーの役目を前輪駆動の『127』や『パンダ』に譲った後、東欧での身近な足という第2の役目を担っていたようだ。

注目すべきはその過程で独自の進化を果たしたこと。リアに縦置きされるエンジンは、当初は500から受け継いだ空冷直列2気筒を600ccに拡大したもので、最高出力は18ps。その後1977年に650cc/24psに強化される。ところがイタリアでの生産終了後、1987年には水冷化するとともに、シリンダーをかつての500ジャルディニエラのように水平に倒した700ccが開発されたのだ。

今回の取材車はこのエンジンを積んだ126bis。500を角ベースで仕立て直したようなスタイリングは、軽自動車枠にも収まる外寸のおかげもあり(空冷エンジン搭載車は軽登録もあった)独特の愛らしさがある。

四角いメーターパネルを据えたインパネは初代パンダを思わせる。メーターには水温計があり、水冷エンジンであることがわかる。タイトなシートはファブリックがおしゃれ。形状はイタリア車そのもので、背中を包み込むような感触だ。小さなリアエンジン車なのでペダルのオフセットはけっこうあり、アクセルが斜め下にあるのでヒールアンドトゥがしやすいところは500と同じだ。

逆に違うのは、500ではフロントにあった燃料タンクを今風に後席下に移動したこと。おかげで後席はヒップポイントが高く、身長170cmの自分では天井に頭がついてしまうけれど、代わりにフロントのトランクは格段に使えるようになった。しかも水平エンジンのおかげでリアにもハッチバックを介した荷室がある。2人乗りとして考えれば使い勝手がいい。

エンジンは500とは違いキーを捻るだけで掛かる。アイドリングは水冷なのに結構にぎやかで、構造は似ているツインエアとはかなり違うが、もちろんこれは歓迎だ。パワーは26psと初期型の約1.5倍なので、加速は500とは段違いという表現を使いたくなるほど。トランスミッションにシンクロが入ったこともありがたい。

それでいてハンドリングは、その場でクルッと回る500の感触そのまま。路面のフィールを伝えながら衝撃は巧みに逃がす乗り心地も近い。でもパッケージングやパワートレインは確実にアップデートされていて使いやすい。日本では500に比べるとタマ数が圧倒的に少ないけれど、前に書いたように世界レベルでは数多く生産されたわけで、狙い目のクラシック・ベーシックではないかと思った。

愛嬌のあるヌォーバ500に比べると、スクエアでシンプルなフォルム。それはより使い勝手を意識した結果だ。撮影車両は1989年型の126 bis。
ラジエター共々リアに搭載されるエンジンは、2気筒704ccのOHV。最高出力は26psしか無いが、車重も600kgと軽いのでよく走る。
デザインだけではなく、素材にプラスチックを多用していることもあってモダンな雰囲気に。小物入れが多く、使い勝手は良好だ。
視認性と最低限のインフォメーションのみに特化したシンプルなメーター。
三角窓によって室内のベンチレーションは良好だ。
シートは小ぶりだけれど、体がしっかりフィットして納まるので意外や快適。
広々とはいかないまでも、オトナでも乗れる実用性の高いリアシート。
フロントにはスペアタイヤが納まる。燃料タンクがリアに移設されたので、荷物が積めるようになった。
エンジンを下部にレイアウトしているので、ラゲッジスペースはしっかり確保。
小径タイヤによってノンアシストのステアリングでも軽々。乗り心地も良好だ。

SPECIFICATION
FIAT 126 bis
全長×全幅×全高:3105×1375×1345mm
ホイールベース:1840mm
トレッド(F/R):1135/1170mm
車両重量:619kg

エンジン:直列2気筒OHV
総排気量:704cc
最高出力:26ps/4500r.p.m.
最大トルク:5.0kg-m/2000r.p.m.
サスペンション(F/R):ウィッシュボーン/セミトレーリングアーム
タイヤ(F&R):135/70R13

TOPICS

FIAT 500
1955年にデビューしたヌォーバ500。基本設計は600を受け継ぐが、よりコンパクトにまとめられた。エンジンは新設計の空冷2気筒を搭載。
FIAT 500D
1960年にマイチェンされ、フロントにウインカーが装着された。このモデルまで後ろヒンジのドアを採用。エンジンはスポルトをデチューン。
FIAT 500L
1968年に追加された上級グレードがLだ。エステリアの識別点は、バンパーガードが追加されたこと。ダッシュボードは樹脂で覆われている。
FIAT 500R
500の人気が高かったため、126がデビューしても併売されていた500R。FIATの新しいロゴが装着される。エンジンは126と同じ594cc。
FIAT 126
500の後継モデルとして1972年にデビューした126。ボディサイズの拡大に伴い、室内空間もラゲッジスペースも広く使い勝手が向上した。
FIAT 126
126は1980年までイタリアで生産され、その後ポーランドで2000年まで生産され続けた。1976年以降は樹脂製バンパーが採用された。
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