買うなよ、買うなよ、絶対買うなよ!魅惑のオールドラグジュアリー
それでもやっぱり懲りない人たちへ
SPECIAL THANKS:GAISYA-YA(https://gaishaya.jp)NIHON NORIMONO SHINKOUKAI(http://www.jvpa-net.jp/)
ヤングタイマー・クラシックのレストアや販売を得意とし、近年エンスージアストたちの注目を集めている気鋭のスペシャルショップ、その名も『GAISYA-YA』が富士山麓の某所に構える秘密基地を訪ねると、三台の超弩級高級セダンが出迎えてくれた。DD6こと『ダイムラー・ダブルシックス』と『ランチア・テーマ8.32』、そして『マセラティ・ロイヤル』である。
日本が未曽有の好景気に沸いていた30年前。大人のエンスーたちがカッコよく乗りこなしていた、これらのクルマたちについては、筆者を含むアラフィフ世代のクルマ好きならば、かつて誰もが一度は憧れたことがあるに違いない。そして人生も折り返し地点を越えた今こそ、若き日に憧れたクルマに乗りたくなってしまう思いも、筆者は同世代として理解できる。
とはいえ、この三台については新車時から現在に至るまで「都市伝説」にも喩えられるトラブルの噂が付きまとい、生半可な憧れだけでは太刀打ちできないとも思われがちである。でも今回は、バイヤーズガイドなどではなく、あくまで「同好の士」として三台の魅力のみを今いちどお伝えすることで、読者諸賢の背中をそっと押させていただこうという目論みなのだ。
まずこの三台は、眺めているだけでも充分に満足できる。かつて、姉妹車たるジャガーXJとともに「世界一美しいサルーン」と称えられたDD6はもちろん、ジウジアーロ最高傑作の一つとも言われるテーマの端正なボディに、華やかなエッセンスを効かせた8.32。そして同じくジウジアーロが、1970年代スーパーカーのデザイン様式を巨大なベルリーナに体現したロイヤル。三車三様に独特の色香を放ち、なんとも魅力的である。
また、それぞれ最上の天然マテリアルを贅沢に使用した「革と木の空間」としながらも、英国式とイタリア式でまったく異なる表現方法を見せるインテリアについても然り。旧さは隠せなくとも徹底して上品なDD6も、あるいは下品に堕さないスレスレの線で、豪奢な雰囲気を醸し出すイタリア勢も、ひとたび車内に落ち着いてしまったら離れがたい魅力を感じさせる。しかし、この三台の真骨頂はエンジンに火が入ってからこそ体感できるものであると、ここに強く主張したい。
19世紀末に誕生した
超高級車ブランド
ダイムラー・ダブルシックス DAIMLER DOUBLE SIX

ダイムラーの歴史は古く、創立は1883年まで遡る。当初はエンジンサプライヤーであったが、1896年に自動車の生産を開始。第二次大戦前は隆盛を極めたが、戦後から衰退の一途をたどり、1960年にジャガーに買収される。その後は同社でブランドを残してきたが、現在ダイムラーブランドは休眠状態となっている。基本的にジャガーの高級グレードという位置づけがダイムラーで、6気筒がソブリン、12気筒がダブルシックスと呼ばれるなど差別化が図られていた。インテリアではローズウッドトリムやコノリー社製最高級レザー、ウィルトンのウールカーペットなど豪華装備を有していた。




贅沢にウッドを使った
エレガントなコクピット

SPECIFICATION
DAIMLER DOUBLE SIX(1990年式)
全長×全幅×全高:4960×1770×1370mm
ホイールベース:2870mm
トレッド(F/R):1480/1500mm
車両重量:1925kg
エンジン形式:V型12気筒SOHC
総排気量:5343cc
最高出力:240ps/5250r.p.m.
最大トルク:37.1kg-m/4500r.p.m.
サスペンション(F/R):ダブルウィッシュボーン/ラディアスアーム
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤ(F&R):205/70VR15