魅惑のオールドラグジュアリー
それでもやっぱり懲りない人たちへ

<ENJOY HISTORIC CARS!>

まずはダイムラー・ダブルシックス。「シュワーン」とウルトラスムーズに吹け上がるとともに、分厚いトルクが泉のごとく湧きだしてくるV12エンジンは、ほかのあらゆる原動機にも代え難い。圧倒的な静粛性から電動モーターに喩えられたこともあったが、同じくほぼ無音でスムーズであっても、DD6のV12エンジンは格段にドラマティックな世界を見せてくれる。

一方、その出自から“ランチア・フェラーリ”などとも呼ばれたテーマ8.32は、『フェラーリ308クアトロヴァルヴォーレ』用の3リッターV8、32バルブエンジンを、ランチア・テーマのエンジンベイに滑り込ませた怪物。かつては「フェラーリ・サウンドを奏でるランチア」などとも言われたが、その実クロスプレーン・クランクに変更された8.32用V8から聴こえてくる排気音は、フラットプレーンV8の308QVとはまったく異なる。しかし、このビート感溢れる咆哮は“元祖ランチア・フェラーリ”、1955〜1956年のF1GPを闘った『ランチア・フェラーリD50』に酷似したもの。持ち前の高貴な血統を、パーフェクトに体現していると言えるだろう。

そしてエンジンフィールについて言えば、マセラティ・ロイヤルおよび前期モデルに当たる三代目クアトロポルテも、また極上と言えよう。マセラティが50年代後半に開発したレーシングスポーツ「450S」を起源とする4カムV8は、低回転域こそアメリカンV8のごときドロドロ感が強調されるが、回転を上げるに従ってビートが揃ってくると、イタリア製スーパーカーの本分であるレーシーなサウンドと、背中をジワーっと押されるような加速感に陶酔させられることになる。ほかの二台と同様、絶対的な速さでは現代のスーパーセダンとは比べるべくもないのだが、そのフィールは、まるで馥郁たるポートワインのごとく甘美な香りを漂わせる。

当時唯一フェラーリ・エンジンを
搭載したサルーン

ランチア・テーマ8.32 LANCIA THEMA 8.32

テーマのデビューは1984年。端正なスタイリングと上品な雰囲気でたちまち人気モデルとなった。テーマ8.32は2年後の1986年に登場する。エンジンはフェラーリ308クアトロヴァルヴォーレに搭載されていたV型8気筒3.0リッターDOHCエンジンを、キャブからインジェクションへ換装してテーマ用にモディファイしたもの。内外装は徹底的にグレードアップされ、インテリアは、これでもかという程ふんだんにレザーとレッドローズの木目が使われた。2年後の1988年、テーマはフェイスリフトが行われ、8.32もそれに倣い精悍な顔つきへと進化。1994年、後継モデルのK(カッパ)の登場で生産終了となった。

全体的にスクエアなボディフォルム。1988年のマイナーチェンジでフェイスリフトが行われ、ヘッドライトが薄くなり精悍な顔つきになった。
トランクリッドに格納されるリアウィングは、130km/hで自動的にせり上がるほか、手動でも操作できる。
同じエンジンを搭載するフェラーリ308を思わせるデザインのアルミホイール。

想像以上に豪華なインテリア

ふんだんに天然マテリアルが使われたインテリア。ステアリングコラムやグローブボックス、そして天井でさえも一部の隙もないほどにレザーで覆われる
乗車定員は5名となっているが、センター部分の盛り上がりが大きいので、4人での乗車がベストだろう。
上質なレザーが使われたシートは電動式で、スライド、アップダウン、リクライニングの調整が可能。
バンパーレベルから開き、開口部が広く使い勝手に優れたトランク。容量はクラス平均サイズ。下部にはスペアタイヤも備える。
フェラーリ308クアトロヴァルヴォーレのエンジンを移植。キャブからインジェクションへ変更され、最高出力は308QVの240psから215psへとディチューンされたが、最高速240km/hを実現した。

SPECIFICATION
LANCIA THEMA 8.32(1991年式)
全長×全幅×全高:4590×1750×1435mm
ホイールベース:2660mm
トレッド(F/R):1495/1485mm
車両重量:1400kg

エンジン形式:V型8気筒DOHC
総排気量:2927cc
最高出力:215ps/6750r.p.m.
最大トルク:26.8kg-m/5000r.p.m.
サスペンション(F&R):ストラット
ブレーキ(F&R):ベンチレーテッドディスク
タイヤ(F&R):205/45VR15

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