魅惑のオールドラグジュアリー
それでもやっぱり懲りない人たちへ

<ENJOY HISTORIC CARS!>

ユーティリティを重視したSUVが、高級車カテゴリーにおいても大きなウェイトを占めるようになった現代となっては、セダンというジャンルは、よりパーソナル性の高い趣味車として再認識されるべきと思われる。ましてヤングタイマーとは言えどもクラシックに属するこの三台は、今や極上の趣味車と断じてしまって間違いあるまい。優等生であることを求められる現代車には望むべくもない爛熟の世界観を味わわせてくれるのだ。

とはいえ、この濃密な存在感に加え、維持に関する不安からも、入手を躊躇しているファンが多いのも頷けよう。実は筆者自身は、間もなく50歳を迎える年に88年モデルのDD6を購入し、アシとして使用していたものの、いささか無謀な酷使が祟ってエンジンに重篤なトラブルを発生させてしまった。つまりは、現在進行形で「痛い目に遭っている」一人である。

また、テーマ8.32やマセラティ・クアトロポルテ・ロイヤルと格闘してきた果敢な車歴を持つ知己も、決して少なくはない。だから、冒頭で述べた「都市伝説」の類の多くが真実であることも、今となってはよく解っているつもりである。それでも、この世界に飛び込んでみたいとする同輩には、心からのエールを送りたいのだ。

若い時分からクルマ遍歴を楽しみ、クルマにまつわる酸いも甘いも知ることになった今ならば、これら三台が漂わせる色香に溺れることも赦されるかも……? 筆者もそんな思いとともにDD6の泥沼にハマってしまったのだが、正直なところ後悔など微塵もしていない。すなわち、今回のタイトルのごとき「懲りないアラフィフ」には、筆者自身も含まれることになる。

あとは、同じ憧れを抱く「懲りない」同志の登場に、期待したいのである。

豪華さと優雅さを備えた
唯一無二の存在

マセラティ・ロイヤル MASERATI ROYALE

クアトロポルテの後継車として1988年にデビューしたフラッグシップモデル。低く長いボディフォルムが特徴で、これにマセラティならではの豪華なインテリアが組み合わされる。4.9リッターのV8 DOHCのエンジンは、4基のキャブレターを装着し300psを発揮。低回転域は心もとないが、回転が上がるにつれ粒が揃うようにスムーズに回るあたりは何ともイタリアンらしい高回転型ユニット。組み合わされるトランスミッションは3速A/Tのみとなる。クアトロポルテとの違いは、バンパー形状、ピクニックテーブルの採用、リアシートの電動化、前輪のブレーキがベンチレーテッドディスクになったことなど。

ロイヤルの全長は実際4910mmとほぼ5mに達するほど長いのだが、キャビンに対してフロントボンネット、リアトランクがフラットで大きく、前後に伸びるようなボディフォルムなので、その相乗効果もあって余計「低く、長く」見える。
ホイールは冷却効果に優れるフィンタイプ。材質は軽量、かつ高価で知られるマグネシウムが奢られている。

明るく豪華なインテリア

ホワイトレザーとウッドで纏められたコクピット。ステアリングはクアトロポルテのものを移植している。
大型のサイズで体を包み込むように支えてくれるシート。スライドやリクライニングなど各部の調整はもちろん電動だ。
まるで応接間のソファのような、フカフカで座り心地抜群のシート。ロイヤルからリアシートの調整も電動化された。
カムシン、クアトロポルテと続いた4.9リッターV8ユニットを搭載。圧縮比が9.5へと上げられたことで20psアップの300psを達成した。
リアドアに設置された木製のピクニックテーブルはロイヤルになってから装備されたもの。

SPECIFICATION
MASERATI ROYALE(1990年式)
全長×全幅×全高:4910×1890×1385mm
ホイールベース:2800mm
トレッド(F/R):1525/1525mm
車両重量:1940kg

エンジン形式:V型8気筒DOHC
総排気量:4930cc
最高出力:300ps/5600r.p.m.
最大トルク:41.0kg-m/3000r.p.m.
サスペンション(F&R):ダブルウィッシュボーン
ブレーキ(F&R):ベンチレーテッドディスク
タイヤ(F&R):225/70VR15

PROFILE

武田公実

ロールスやベントレーと言った超高級車、そしてクラシックカーやイタリア車に造詣が深い自動車評論家。本人も数年前にダイムラーを手に入れ痛い目にあったが、やはり凝りていない様子。

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