3世代のエキシージが予算600万円で
全て射程圏内に入る幸せ!ベストエキシージを探せ!
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今では『エリーゼ』と人気を二分するロータスの看板車種となっている『エキシージ』だが、誕生のきっかけはスポーツエリーゼの市販車化に対するファンの熱い思いだった。1996年に発売されるやいなや大人気モデルとなったエリーゼは、傾きかけていたロータスを再生することに成功。エスプリも細々と生産されていたが、ほぼエリーゼの一本足打法でロータスを牽引していた。2000年にはワンメイクレースが始まるが、その専用車として仕立てられたのがスポーツエリーゼだ。もともと市販車化の予定はなかったが、ハードルーフをフィッティングしてボディ剛性を高め、エンジンやシャシーなどをハイチューンされたスタイルに痺れたファンのラブコールに応えた格好だ。コンペティションマシンのロードバージョンという、スキモノにはたまらないDNAを持つのがエキシージ。ロータスにとっても特別な存在なのだ。
今回はS1(シリーズ1)〜S3(シリーズ3)の歴代モデルが揃い踏みすることとなったが、奇しくも販売価格は600万円前後で揃っているという。歴代エキシージに一気乗りすることでそれぞれのキャラクターを再確認するとともに、3台が同価格帯ならば、今どれを入手するのが幸せなのだろうか? ということも妄想してみたい。
エキシージS1やスポーツエリーゼに試乗した経験があるが、ちょっとばかり手強いという記憶がある。過去の試乗メモをパラパラとめくってみると、そもそもエリーゼ/エキシージS1系は、S2以降に比べると主にリアサスペンションの容量が十分ではなく、それゆえ初期のオリジナルのようなソフトタッチのサスペンションとグリップの高くないタイヤの組み合わせのバランスがいい。サスペンションを締め上げ、タイヤをグリップ志向にすればするほどコーナリングが速くなるものの限界域でトリッキーになっていく、というようなことが書いてあった。
ところが今回、改めてエキシージS1を走らせてみると、持っていたイメージよりもずっとフレンドリーだった。一つの要因は、ハイチューンだとはいえ1.8リッターのNAエンジンが、現在の基準からすれば過剰にパワフルではないからだろう。エキシージといえばスーパーチャージャーの生み出す大トルクでドカンッと背中を押されるイメージが、いつの間にやら頭に植え付けられているからだ。
もう一つは、過去の自分はロータスのことが今ほど分かってはいなかったので、闇雲にプッシュしてかえって姿勢を崩しがちな運転をしていたからかもしれない。現代のように普段はESC(車両安定装置)が前提で、タイヤもグリップ力とコントロール性のバランスが良好というわけではなかった20年近く前のミッドシップカーは、ブレーキングなどでフロントサスペンションがストロークしていくと、トーアウト気味のアンダーステア傾向にして安全性を担保していたわけで、そんな特性のクルマはコーナー進入時には前後の車高バランスをイーブンにするよう意識したほうが、スムーズかつ速く走れる。それを理解せずに攻めるとアンダーステアを誘発し、そこから無理に曲げていきなりリバースステアになってしまうことを繰り返して“手強い”と感じていたのだと思う。イギリス流の基本に忠実な運転=前後の車高バランスを整える運転をしていけば、エキシージS1は素直でコントローラブルなハンドリング特性で応えてくれた。少し成長し、もう一度乗ることができたのは幸せだった。そう言えば、ロータスの伝説のテストドライバー&エンジニアのロジャー・ベッカーさんは「ウチのクルマは、ドライビングスキルが高い者ほど得られるドライビングプレジャーが高くなる」と言っていた。今、その言葉が身に染みる。
その上で、エキシージS1を改めて見つめ直すと、車両重量が700kg強と絶対的に軽いこと、ローバーKシリーズの低重心なことなどが効いていて、現代では成し得ない異次元のハンドリングぶりを見せつけるのが凄い! 車齢的に気を使う面はあるものの、ライトウェイトだからこそもたらすロータスのライド&ハンドリングをたっぷりと堪能させてくれるモデルなのだ。
エリーゼがS2となってから3年後の2004年、エキシージもS2がリリースされた。S1は647台の限定生産だったが、S2は本格的に量産された。エリーゼS2の初期はローバーKシリーズ・エンジンだったが、2004年にはトヨタ製2ZZ-GEエンジンへ。エキシージS2は当初から2ZZ-GEを搭載し、2006年にはこれにスーパーチャージャーを追加したエキシージSが出現。その前年に、スポーツエキシージ240Rが50台限定で発売されたが、これを量産化したということだ。S1に比べると重量増となったS2だが、スーパーチャージャーによってエキシージらしいパフォーマンスを得たことになる。
重いとはいえ、車両重量は900kg台前半で当時の基準でも十分にライトウェイト。これに、低回転から大トルクを発揮するスーパーチャージャー搭載エンジンの組み合わせは、それまで味わったことのない夢見心地な加速感を見せることとなった。発進した直後から、重いものを動かすときの抵抗感らしきものがまったくなく、ボディに羽根が生えて飛んでいくかのような不思議な浮遊感覚。アクセルを床まで踏みつけてシフトアップを繰り返しても、加速感の衰えをあまり感じない。
圧倒的な軽さが生み出す異次元の走り LOTUS EXIGE Sr.1

Sr.1 BUYERS INFORMATION
シリーズ1はメンテナンスありきのクルマということを最初に述べておきたい。なので、距離を乗っていないから、きれいだからという理由で購入する場合は注意が必要だ。なぜなら、ローバー系エンジンは手入れをちゃんとしていないと一発で終わってしまう危険性があるから。エキシージは元々110psのパワーを178psまで引き上げたチューニングステージが高い仕様なので、各部への負担はかなりなものとなる。あまり距離が伸びていない置いてあっただけの個体をいきなり回して乗ったりすると、すぐにエンジンが焼き付いてしまったりする可能性があるのだ。だから距離が伸びていないからと安心せず、低走行車でも定期的にメンテナンスをする必要がある。
また、適当にモディファイされたクルマが多いのも事実。様々なパーツが付いているから安心、社外品で交換してあるから安心とはならない。例えばコントロールユニットがダメだと交換してしまうパターンが多いが、コントロールユニットはモトロニック製なので、スロットルバランスやインテーク側のリークなどをチェックしてちゃんと調律してあげれば、調子は必ずと言っていいほどよくなる。実際コントロールユニットを社外品に交換して調律するのはかなり難易度が高い。これを「気難しいのがエキシージ」などと履き違えている人が多い。普段使いも考慮に入れたセッティングは純正のコントロールユニットが一番だ。必要以上に抜けのいいマフラーを使っていると、これもエンジンがばらつきやすいので注意が必要だ。
水温を気にする人が多いが、実際は油温に気を付けなければいけない。というのも、オイルの温度管理を怠ると、エンジンに深刻なダメージを与えてしまうからだ。空冷のオイルクーラーが付いているが、走っていないと冷やせないので渋滞中は効かない。これにも注意したい。
外装では、ぶつけでもしない限りなかなか壊れることはないが、ルーフベンチレーターから水がルーフ側に入って侵食してしまうケースが多いので、注意が必要だ。


SPECIFICATION
LOTUS EXIGE Sr.1
全長×全幅×全高:3761×1720×1201mm
ホイールベース:2300mm
トレッド(F/R):1459/1476mm
車両重量:725kg
エンジン形式:直列4気筒DOHC
総排気量:1796cc
最高出力:178ps/7800r.p.m.
最大トルク:17.4kg-m/6750r.p.m.
サスペンション(F&R):ダブルウィッシュボーン
ブレーキ(F&R):ベンチレーテッドディスク
タイヤ(F/R):195/50R16/225/45R17
新車当時価格:680万円〜