ラリーのヒーローは
今も輝き続けていた!

<FRENCH CARS>

さて、グループBマシンの中で最も洗練され、そして成功したのはプジョーが生み出した『205ターボ16』であるのは疑う余地がない。ミッドシップ4WDターボという理想的なコンセプトでクワトロを古典的な4WDへ押しやってしまったのだ。

目の前にある『205 T16』は、ロールケージも組み込まれて軽くモディファイされている。驚いたのはシートポジションの高さだ。シート下に燃料タンクがある関係でこれ以上シートは下げられないとのこと。WRCマシンはフルバケットシートなのでいくらか低いだろうが、長身のヨーロピアンドライバーがこの狭い空間ではかなり窮屈だっただろうと想像できる。

そしてこの小ささと見た目の強い塊感は、このマシン独特のものだ。

重たいクラッチを踏み込み、ギヤをリリース。発進はクラッチを丁寧に繋げばエンジンはストールしない。しかし元気よくダッシュしようとしても、3000r.p.m.以下では空吹かしでもなかなかエンジンは反応してくれない。そのためクラッチをつないだ瞬間に回転の落ちが激しく、軽快なスタートが決められない。

エンジン・コンピュータのデータやターボブーストが変更されているセミチューンのエンジンなのでターボラグが助長されている。これは走り出すとさらに激しくなり、4000r.p.m.以下では常にターボラグとの戦いである。

そこを過ぎるとエンジンフィーリングは豹変し、一気にターボのトルクが爆発する。5000r.p.m.でフルブーストが掛かると強烈にパワフル。ブーストの調整中ということで、アクセル開度に気を付けていないとオーバーシュートしてブーストが掛かりすぎてしまう。加速の鋭さやトルクの力強さと気持ち良さは、モンスターだったグループBマシンの片鱗を見たような気がした。

トランスミッションの入りは良く、素早いシフトにも対応している。またギヤ比もしっかりとクロスしていて、6000r.p.m.以上回してシフトアップすれば4000r.p.m.以上でつながり、ターボラグを回避し、鋭い加速を維持できる。

ブレーキは利かない。思いっきり踏力をかけてもなかなかシャープに減速が立ち上がらなくて手を焼いたが、左足ブレーキングでコーナリングの手助けをするにはちょうど良いバランスだ。

ミッドシップとはいえバランス的に重量物がリアにある動きをするマシンなので、リアを振り出すような走りより、フロントを回り込ませるような挙動にするのが向いている。そのためかフロントサスペンションは柔らかめの味付けである。このフロントを回り込ませ、リアの挙動を規制するにはコーナリング中の左足ブレーキが効果的だったのだ。

コーナリング中、パワーバンドからのアクセルオンでは、フロントタイヤが逃げるようなプッシングアンダーが出る。ターボトルクがあるだけになかなかスパルタンな動きをするマシンだ。

パワーを路面に伝えるにはやはりテクニックが必要なマシンだったようで、まだまだ4WDは癖があった時代のマシンと言えるだろう。

プジョー205ターボ16 PEUGEOT 205 TURBO16

標準モデルより全幅は約100mm広げられている。ミッドエンジンのため、サイドに吸気ダクトが設けられる。
コクピットは標準モデルの面影はなく、アナログメーターが並ぶラリーに適したデザインへと変更されている。空調のスイッチなど、ロードカーとしての使い勝手もしっかり考えられている。
シートの下に燃料タンクを配置するので、ポジションはやや高め。背後はバルクヘッドが隣接しタイトな印象。
エンジン本体は向かって右側にオフセットして搭載される。サスペンションなどは全く別の形に作り変えられている。
フロントにはラジエターやスペアタイヤなどが置かれる。機能性だけを追求していることが分かる。
大きく張り出したフェンダーに合わせて、タイヤサイズが大きくなっている。純正は前後共に210-55VR390が指定サイズ。

TOPICS グループB最強のマシンとして
多くの勝利を収め席巻した

205T16は1984年にWRCデビュー。3戦目となる1000湖ラリーで早くも初優勝初優勝を飾ると、そこからライバルを寄せ付けない速さと強さを発揮した。1985年には8勝、1986年には6勝で2年連続王座を獲得し、グループB最強のマシンとして君臨した。なお1985年のコルスからはさらに過激なEvo2を使用したが、残念ながら1986年にグループBは終焉してしまった。

SPECIFICATION
PEUGEOT 205 TURBO16
全長×全幅×全高:3820×1700×1353mm
ホイールベース:2540mm
トレッド(F&R):1430mm
車両重量:1145kg

エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1775cc
最高出力:200ps/6750r.p.m.
最大トルク:26.0kg-m/4000r.p.m.
サスペンション(F&R):ダブルウィッシュボーン
タイヤ(F&R):210/55VR390

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