V6アルピーヌ

<FRENCH CARS>

ALPINE V6 TURBO

滑らかな面構成に前後ブリスターフェンダーがアクセントを添える。A310から一気にモダンなデザインへと変貌を遂げた。

この4台ではトップバッターになるA310は、A110の2年後に登場したポルシェ911に影響されて生まれたと言われている。アルピーヌはA108やA110でも2+2を用意していたが、より快適に200km/hクラスの性能を発揮できるGT的な車種を求めるようになった。

その結果、鋼管バックボーンフレームのリアにエンジンをオーバーハングするレイアウトは踏襲されたものの、ホイールベースは170mm伸ばされた。サスは前後ダブルウィッシュボーンで、新設計のリアはその後A110や5ターボにも使われた。

パワートレインについては、プジョーやボルボと共同開発中のV6搭載を想定して設計されたが、デビューには間に合わず、A110にも積まれた1.6リッター直列4気筒が採用された。150psを発生する2.7リッターV6を投入したのは1976年。シリンダー数、排気量とも当時の911に並んだ。

デザインはル・マン24時間レースのポスターなどを手掛けた経験も持つミシェル・ベリゴンと、後に5ターボに関わるイヴ・リーガルがまとめ、空力についてはプロトタイプスポーツのM63やA442Bなどを手がけたマルセル・ユベールが担当したという。

V6は4気筒時代と比べると、ヘッドランプが6灯から4灯に変わったほか、前後にエアロパーツが追加され、窓枠がブラックアウトされるなどの変更があった。さらに1980年にはマイナーチェンジで、前後バンパーがサイドまで回り込むとともに全体がブラックアウトされ、サスペンションはルノー5ターボの経験を投入。3穴だったホイールは4穴になった。

続いて1983年には、日本では“フォーミュラパッケージ”と呼ばれた『GT』が登場。大胆なオーバーフェンダーやフロントエアダムが特徴だった。このGTをベースにして、193psを発生する2.8リッターを積んだ高性能版ブローニュも設定された。

日本ではV6ターボがまとまった数輸入された。そして次の『GTA』は1985年デビュー。車名が示す通りエンジンはV6のみ。1989年まで販売されたGTが自然吸気2.8リッター、ターボが2.5リッターだった。

ホイールベースは2340mmに延長され居住性を拡大。インテリアのデザインはあのマルチェロ・ガンディーニが描いた。一方エクステリアは、シトロエンのブレークやプジョーのクーペカブリオレの製作も担当したコーチビルダー、ウリエーズが手がけた。

1990年にはこれをベースとした『ル・マン』を発表。V6ターボをベースとして前後にブリスターフェンダーを装着しワイドトレッド化。フロントマスクはA310 V6のようにウインカーがヘッドランプの下に移動した。325台が生産され、うち50台が日本に上陸したと言われている。

このル・マンをもってV6ターボの時代は終わり、翌年『A610ターボ』にスイッチする。ボディはヘッドランプがリトラクタブル化された以外は旧型に似るが、シャシーはバックボーンを基本としつつ大幅に強化され、V6ターボエンジンは3リッターに強化されるなど、さまざまな部分が改良されていた。しかし販売は思わしくなく、1995年には生産を終了してしまった。

僕はかつて姉妹誌カー・マガジンの取材で4気筒のA310に乗っている。だから今回はその続編という雰囲気もしていた。最初に乗ったA310のV6は特にそうで、タイトなコクピットやフランス車特有でもあるふっかりしたシートなど共通する部分が多かった。でもやっぱりエンジンがV6になると違うなあとも感じた。

PRVのV6はバンク角90度なので、アイドリングはちょっと荒っぽい感じがするけれど、走り出すとポルシェの空冷フラット6を思わせる響きを届けてくる。1トンちょっとのボディに対し力は余裕たっぷり。1500r.p.m.あたりからでも加速するけれど、3000r.p.m.ぐらいからの硬質なサウンドを耳にすると、積極的にここを使いたくなる。

乗り心地は4気筒ほどまろやかではないけれど、フランス車らしいしっとり感は伝わってくる。ハンドリングはフロントが軽くリアが重い。でもコーナー入口でしっかり減速すれば、ノーズはすっとインを向いてくれるし、90度V6が低い位置に積まれているので、立ち上がりはしっとりした接地感を楽しみながら加速していける。

続くV6ターボはドアを開ける瞬間から独特だ。四角いボタンを押すとシュッという音とともにドアが浮き上がる。30年前のクルマなのに、いまだ未来的だ。キャビンはシートの感触こそ似ているものの、幅に余裕があるのでペダルのオフセットはほとんどない。身長170cmの人なら後席になんとか座れることも大きな違いだ。

走り出してまず感じたのは、この時代のスポーツカーとしては静かなことと、3000r.p.m.あたりでターボが効いてからの加速がフワッと浮遊するようなフィーリングで、自然吸気とは別の種類の感動ができることだ。

タイヤが太くなったためもあり、乗り心地は硬めになったけれど、その中に優しさが漂っているところがフレンチテイスト。ノンパワーのステアリングは低速では重さを感じるようになったが、スピードに乗れば逆にダイレクトな手応えが心地よい。

ノーズの入りの軽さはリアエンジンそのもの。立ち上がりでアクセルペダルを踏み込むと、後輪がグッと踏ん張り、ターボパワーが二次元的な加速を演じる。しかも最初からV6前提で設計されただけあって、バランスの良さも前作を上回っていた。

ル・マンはこのV6ターボがベースということで、キャビンは基本的に共通だ。ただし黒一色だったトリムがグレーの濃淡になるなど、特別仕立てであることを控えめにアピールしている。

リアを17インチにアップしたうえに、265/40という太くて薄いタイヤを履くためもあり、乗り心地はV6ターボより明らかにソリッドで、路面のペイントさえ伝えてくる。それなのに鋭いショックはしなやかに吸収してくれるのが不思議だ。

ステアリングは路面の状況をあますところなく伝え、コーナーに入るとずっしり重くなり、そのままスロットルに力を込めると接地荷重の軽いフロントが外へ外へと膨らもうとする。だから進入でのブレーキングは必須だ。フロントに荷重をかけてしっかりグリップさせると、気持ちよい脱出加速が堪能できるようになる。レーシングカーを思わせる手応えの強さが、ル・マンには加わっているのだ。

四角四面のメーターナセルや、理路整然とレイアウトされたスイッチ類などモダンな印象。ガンディーニがデザインを手掛けた。
A310のシートを発展させ、近未来感をイメージさせるシート。座り心地は快適だ。
ホイールベース延長により、リアシートのスペースが広くなった。しかし大人が使用するには狭い。
エンジンはPRV2.7のストロークを10mm縮めて2458ccとし、ターボとインタークーラーを組み合わせて200psを発生。
前後でタイヤ幅は異なるが、ホイール経は同じ15インチを装着する。

SPECIFICATION
ALPINE V6 TURBO
全長×全幅×全高:4330×1750×1190mm
ホイールベース:2330mm
トレッド(F/R):1495/1455mm
車両重量:1220kg

エンジン形式:V型6気筒SOHCターボ
総排気量:2458cc
最高出力:200ps/5750r.p.m.
最大トルク:29.6kg-m/2500r.p.m.
サスペンション(F&R):ダブルウィッシュボーン
タイヤ(F/R):195/50VR15/225/45VR15

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