新型チンクはまたしても我々を驚かせた!やるじゃん500!
知るほどに欲しくなる!

イタリア(ITALIA) フィアット(FIAT) ニューカー(新車) EV 500
新しいフィアット500が、ようやく我々の前に姿を現した! しかもその内容は驚くことばかり。100%電気自動車であり、最先端の技術も積極的に取り入れ、時代をリードするクルマとして走り出す。まずはその詳細をお伝えしよう。
TEXT:佐藤考洋 PHOTO:FCA

ALL NEW FIAT 500!

SPECIFICATION
FIAT 500
最高出力:118ps

最高速度:150km/h
0-100km/h加速:9.0秒
航続距離(WLTP):320km

思い返せば2000年にコンセプトモデルとして初めてその姿を現したトレピウーノに期待を膨らませ、2007年にデビューした3代目となるチンクエチェントにときめいた。当時はミニやビートルなど、レトロモダン人気が最盛期だった。ヌオーヴァ500をモチーフとした、3代目500の愛嬌あるスタイルは、瞬く間に世界中のファンを虜にした。

その中身は2代目パンダのプラットフォームとファイアエンジンを組み合わせたもので、走りに関していえば、ときめきはあまり無かった。乗り心地はヒョコヒョコとしていて、見た目のエレガントさとはかけ離れていたが、それも「これがチンクの味だよ」と、我々を納得させるだけのキャラがあった。さらに「刺激が欲しいのであればアバルトがあるよ!」と、巧みなブランド戦略もしっかり仕組まれていたのであった。

以来、これまでの13年間に及ぶチンクエチェントの快進撃はご存知の通り。キャンバストップを備えた500C、2気筒エンジンを搭載したツインエアが追加された時は、「ヌオーヴァ500の再来だ!」と歓喜した。2016年には初となるマイナーチェンジが実施され、各部をブラッシュアップ。そして有名ブランドとのコラボモデルや限定モデルなど、あの手この手で世界中のファンを楽しませてくれた。

2019年末にはハイブリッドが追加されたが、現行モデルのプラットフォームを使い続けることにある意味驚かされた。しかし、その裏で新型500の準備は着々と進められていたのだった。

満を持してジュネーブ・ショーの会場で、4代目となる新型500はワールドプレミアされる予定だった。しかし、残念ながら新型コロナウイルスの影響により、ジュネーブ・ショーは中止となり、3月4日に新型500はミラノで発表された。クルマ好きの皆さんであれば、既にその概要は調べていることと思うが、ここで改めて説明しよう。

新型のデザインは先代モデルの要素を踏襲しながら、クリーンでシャープにまとめられている。他の何にも似ていない唯一無二の存在感がある。
ヌォーバ500をモチーフとしたデザインはキープコンセプト。愛嬌がありながらも、よりエレガントなデザインに仕上がっている。

新型500はFCAにとって、初の電気自動車(BEV)とアナウンスされている。だが2012年に500eとして、BEVは既にリリースされているのだ。では何故「初」と言うのか? それは新型500に、初めてBEV専用のプラットフォームが与えられたからだ。フィアットのアイコンである500を、内燃機関と併用せずにBEV専用としたことは、FCAの今後のモビリティに対する新たな決意表明であるようにも思える。新型500を知れば知るほど、このクルマにかける熱い意気込みと情熱が伝わってくるのだ。

新型500はこれからのモビリティのキーワードとなる「CASE」を強く意識している。ちなみにCはコネクト、Aは自動運転、Sはシェア&サービス、Eは電気自動車を意味する。新型500はこれら全ての要素が取り入れられ、さらにそこに際立つ個性的なデザインや運転する楽しさも加味され、より魅力溢れるクルマに仕立てた。

エクステリアデザインは、ヌォーバ500をモチーフとした、先代からのキープコンセプトが貫かれている。誰がどの角度から見ても500と分かる存在感。アイコンとなる丸いライトには、瞼がついて少し眠たげな目つきとなった。センターにあったフィアットのエンブレムは500の文字へと変わり、それは鼻の穴のようにも見える。下部にあるグリルはニコリと口角が上がっていて、全体を見渡すとこれまで以上に愛嬌のある表情を見せる。

ボンネットの境目からは周方向にラインが引かれ、この線を境に上部は丸みを持たせ、下部はシャープにスッキリとした面を演出。ドアは電磁式の開閉機構を採用し、ドアハンドルを無くすなど徹底してフラットな面にこだわっている。愛嬌に加えてエレガントさも備わり、大人の色気が増したようにも見える。気になるサイズは先代モデル比で、全長と全幅がそれぞれ60mm拡大し、ホイールベースは20mm延長されたが、全長は4m未満に抑えられている。サイズは若干大きくなったものの、それでも5ナンバー枠に収めているのは素晴らしい。シティカーとしての機動性も忘れていないのだ。

500のアイコンでもある丸形のヘッドライトは楕円形へと進化。ボンネットでカットされ、上部は瞼とまつ毛のようにも見える。
ボディサイドは周方向にラインが入り、フェンダー部分はウインカーも内蔵されている。

シンプルかつエレガントに!

インテリアのデザインは一新されていて、踏襲されたのはシンプルであるというコンセプトと、丸いメーターフードくらいではないだろうか。全体の質感は従来モデルより格段に上がっていて、なかでもユニークなのは異なる素材を組み合わせ、それもデザイン要素として取り入れていることだ。さらにシートにはFIATのロゴがステッチされ、細部に渡るセンスの良さは相変わらず抜きん出ている。

モーターとなったことで、インストゥルメントパネルのセンターに生えたシフトレバーが無くなり、代わりにセレクターはボタン式となった。スッキリとしたうえに収納スペースまでも設けられた。左右シートの間にはコンソールボックスが置かれ、オーディオの一部スイッチをビルトイン。センターには10.25インチの大型タッチスクリーンパネルが設置され、最新版となるUコネクト5インフォテイメントシステムが搭載された。様々な情報の表示に加えて、故障の際はアシスタントサービスと連動して支援が受けられる他、スマホとの連動で充電状況やエアコンのプログラム、定期点検のスケジュール管理など、多岐に渡るサービスや便利な機能が手軽に使える。

室内はボディサイズが大きくなったことで、スペースも広くなっている。バッテリーは、シャシー中央下部に収まっているので、ラゲッジルームはこれまで同様のスペースが確保される。ユーティリティも犠牲にしていない。

よりエレガントにシンプルにまとめられた室内。電磁式のオープナーを備えたことで、ドアレバーはなくなりボタン式となった。
TFTパネルのメーターデザインもこれまでの500を彷彿とさせる。新型500にはレベル2の自動運転技術が搭載される。
センターには10.25インチのタッチスクリーンモニターをレイアウトする。Uコネクト5と呼ばれる最新のインフォテイメントシステムは、車両状況の表示からスマホを使っての遠隔操作など、様々な便利機能を有する。
左右シートの中央には、コンソールボックスが設置された。
丸みを帯びたメーターナセルのデザインは踏襲される。
ローンチ・エディションとなる「ラ・プリマ」はレザーシートを採用。その座面にはFIATのロゴがステッチされている。こうした細かな部分に至る作り込みはさすがだ。
室内は先代より若干広くなっている。

パワートレインは、42kWhの容量を持つリチウムイオンバッテリーが採用され、85kWhの急速充電器に対応する。航続距離はWLTPサイクルで最大320kmを確保。動力性能は最高速度がリミッター作動で150km/h、0-100km/h加速が9秒、0-50km/h加速は3.1秒と不足はない。モーターならではのトルクルフルな走りが楽しめるはずだ。

そして、新型500には3種類の走行モードが用意されている。登山ガイドを意味する「シェルパ」は目的地、または充電ステーションまで確実に到着出来るよう導いてくれる。最高速度は80km/hでリミッターが作動し、消費電力は極力抑えられている。「ノーマル」は内燃機関に近づけたフィーリングで、これまでのクルマのように違和感なく乗れるモードだ。「レンジ」は回生ブレーキを強く効かせることで、ワンペダルでのドライブを可能とする。アクセルコントロールさえ慣れてしまえば、いちいちブレーキを踏むことなくラクに走れるのである。

人々に元気を与える
存在となって欲しい!

特徴的なデザインのテールランプは、より立体的な造形となった。500のロゴはライトブルーに縁取られ、0をeに変えている。
タイヤは205/45R17を装着する。

さて、新型500は3月4日から欧州で予約受付がスタートしている。キャンバストップの「C」をベースとした「ラ・プリマ」と名付けられたローンチ・エディションの価格は3万7900ユーロ。邦貨換算すると約450万円と、実に現行モデルの2倍の価格となった。そもそもBEVとなったことでコストが嵩み、さらにローンチ・エディションは全装備テンコ盛り仕様なので、新型500シリーズの中では最も高い価格帯であろう。今後はクローズドボディや、装備を簡略化した廉価版もラインナップされ、優遇税制やランニングコストを含めればもっと現実的な価格になるのではないだろうか。

さて、ようやく発表された新型500だが、新型コロナウイルスの影響によって計画は大幅に遅れている。実際に走り始めるのは、まだまだ先のこととなるだろう。新型500がイタリアの街中を走り始めたとき、それは再び明るい日々が訪れたことを意味するのではないだろうか。愛嬌溢れる新型500が、人々に再び元気を与えてくれる存在となることを期待したい。今は一日も早くこの状況が収束することを願うばかりだ。

TOPICS 僕らを楽しませた16年間の歩み

500
2007年に発表された3代目500。本拠地であるトリノで街をあげての盛大な発表会が行われた。
500ハイブリッド
2019年末に追加されたハイブリッド。現在はマニュアルトランスミッションのみの組み合わせ。
500フェイスリフト
2016年に実施された初のマイナーチェンジ。基本スタイルはそのままに、内外装のデザインを刷新。
トレピウーノ
2004年に公開されたトレピウーノは、2007年から復活する500の原型となったコンセプトモデル。
ツインエア
かつての500を彷彿とさせる2気筒のツインエアは2011年に登場。以来現在も搭載されている。
500C
2008年に登場した500C。キャンバストップを採用し、後部座席まで含めた開放感が味わえる。

2012年にBEVは
登場していた!

2012年のLAショーで発表されたフィアット500eは、500をBEVへとコンバートした北米専用モデル。24kWhのバッテリーを搭載し、航続距離は140kmだった。そして、2019年のジュネーブ・ショーで発表されたのが、モデルコンセプト・セントヴェンティ。こちらもBEVで、次期パンダとの呼び名が高い。実際にその可能性は十分あるような気がする。

イタリアンブランドが
コラボモデルを同時発表

新型500の発表と同時にお披露目されたのが、「ブルガリ」「アルマーニ」「カルテル」のイタリアンブランドとのコラボモデルだ。オレンジ色の500はブルガリが手掛けたもので、同社のエレガントなブランドイメージが全体に投影されている。シックなグレーでまとめたアルマーニは、内外装に特別な模様やGAの文字をあしらい、クールなスタイルを演出。そしてカルテルが手掛けた500は、同社のイメージカラーである深いブルーでまとめ、オブジェのような輝きを放っている。